米酢と赤酢

寿司飯(舎利)を作るお酢は米酢と赤酢があります。
米酢はお米から作ります。赤酢は酒糟から作ります。
江戸時代米酢はお米から作るため高価な調味料でしたが江戸時代末期に酒糟から作る比較的安価な赤酢が考案されました。
この頃江戸前寿司が考案され急速発展したのは赤酢が出来たからではないかと私は思っています。太平洋戦争が始まるころまでは多くのすし店は赤酢を使っていました。
私が修業中に聞いたご高齢の職人さんの話です。「戦前はどのすし屋も皆赤酢を使っていたんだよ。戦争が激しくなってお米が手に入らなくなってすし屋はやってゆけなくなってね。白米のご飯は銀シャリと言ってそう易々と食べれなかったね。戦後すし屋を営業できるようになった時、赤酢を使うと舎利が黒くなるだろ、みんな銀シャリの白いご飯にあこがれていたから赤酢ではなく米酢を使い始めたんだよ。その頃は米酢も安くなっていたからね。今じゃほとんどのすし屋が米酢を使うようになったね。赤酢の店はもう数えるほどしか残っていないよ。」この話が真実かはわかりませんが私が紅顔の美少年だった頃聞いたお話です。