鯵のゼイゴ3度引き
鯵にはウロコが変形した硬いゼイゴがあります。
修行中ゼイゴは残さず取れとうるさく言われました。
残さず取るにはゼイゴの上、下、真中と3度包丁を入れます。
これをゼイゴの3度引と言います。
ある日職人さんに「鯵は握る時皮は取ってしまうじゃないですか。ゼイゴは付いた
ままでいいんじゃないですか?」「お前いつかそう言ってくると思っていたよ。明日おしえてやるよ。」その日はそれで終わりました。
翌日仕入れの中にいつもより小さい鯵が数匹入っていました。
「小さい鯵は〆鰺にして持って来てくれ。」〆鰺にして持ってゆくと「ちょっと待ってくれ。」片身で1貫の大きさの〆鰺を皮はつけたまま握り「食べてご覧。」
「頂きます。」口の中に入れると「うそ!皮が無い!」「わかったか?」
「はい!何も言う事ありません!」〆鰺にすると皮は口の中で溶けてしまいます。
「俺が修行中の頃は〆小鰺だったからゼイゴ引きはうるさかった。今は生で握るから
皮は引いてしまう。多少残っていても問題はないけど残さず取れよ。