渡辺 美佐子さん

「舟を編む」という映画を観ました。
お話したいのは映画の批評ではなく、大家さんの役でご出演の渡辺美佐子さんの事です。前にも書きましたが45年前私は帝国劇場地下のお寿司屋さんで働いていました。
時折出演されている役者さんのご贔屓から楽屋へのお寿司の差し入れのご依頼があります。やはり「屋根の上のバイオリン引き」のテーベ役森繁久彌さんが多かったように記憶しています。
お届けするとお付きの方が取り次いでくださいます。「どなたがおいでですか?」「お寿司屋のお使いの方です。」「頂いて下さい。」どの役者さんもこの会話の後お付きの方に渡して帰ってきます。
ある日ご依頼で明治座までお届けすることになりました。
「渡辺美佐子さんの初めて座長公演なんだ。頼むよ」。
楽屋へ伺いお付きの方にお届けの旨を告げますと取り次いでくださいます。
「どなたがお見えですか?」「お寿司屋のお使いの方です。」同じような会話の後出て見えたのは渡辺美佐子さん本人でした。
「ご苦労様でした。○○様には私からお礼の電話を入れておきます。ありがとうございました。」丁重に挨拶され受け取っていただきました。
以来私渡辺美佐子のファンです。
2年間ほど帝劇店にいて多くの役者さんにお届けしましたが、ご本人にお会いしたのは渡辺美佐子さんだけです。
映画、テレビでご活躍を見るたびあの時の光景がはっきりと思い出されます。

すし屋のひとり言

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